新人の日報を見ていると、「次の行動目標」の欄に、こんな内容が書かれていることがあります。
ヒアリング練習のゴール設定をしっかり考える
「購入意思を固める」を意識してロープレを再実施する
物件撮影で物件周辺を見て、物件に対する理解をつける
どんな不安を抱えているかを想像できるようにする
端的に説明できるようになる
どれも、本人としては「今日の反省を踏まえて、明日はこうしよう」と考えて書いているはずです。
ただ、行動目標として見ると、これでは不十分です。
なぜなら、翌日になったときに、
「結局、何をすれば達成なのか?」が、誰も分からないからです。
今回は、日報や振り返りで書く「次の行動」を、明日本当に実行できる行動計画にするための考え方について整理します。
行動目標は「願望」ではなく「自分との約束」
まず、行動目標を考えるうえで重要なのが、
「何を」「いつまでに」
の2つです。
たとえば、
いつか1,000万円貯める
という目標と、
1年後までに1,000万円貯める
という目標。
同じ「1,000万円を貯める」でも、意味は大きく違います。
1年後という期限が決まれば、
「半年後にはいくら必要なのか」
「毎月いくら貯める必要があるのか」
「そのためには毎月の支出をいくら減らすのか」
「収入をいくら増やす必要があるのか」
と、具体的な行動を考え始めます。
一方、
「いつか1,000万円貯める」
には期限がありません。
今年やらなくてもいい。
来年やらなくてもいい。
極端に言えば、何も行動しなくても「まだ途中です」と言えてしまいます。
時間制限のない目標は、行動目標ではなく願望になりやすい。
だからこそ、
「何をするのか」
だけではなく、
「いつまでにやるのか」
まで決める必要があります。
「しっかり考える」「意識する」では検証できない
では、最初に挙げた例を見てみましょう。
ヒアリング練習のゴール設定をしっかり考える
一見すると、やるべきことは書かれています。
ただ、翌日に、
「今日は、ヒアリングのゴールについてしっかり考えました!」
と報告を受けても、報告を受けた上司は、
「何をもって『しっかり』とするのか」が全く分かりません。
- 30秒考えて、本人が「しっかり考えた」と言えば達成なのか?
- 30分考えれば達成なのか?
- 紙に書く必要があるのか?
- 誰かに考えたことを確認してもらうのか?
・・・ここに、達成を計る基準がありません。
同じように、
「購入意思を固める」を意識してロープレを再実施する
も、「意識したかどうか」は本人の頭の中にしかありません。
「意識しました!」と言われれば、それ以上の確認はできない。
他にも、
- 理解する
- 意識する
- 考える
- 想像できるようにする
- 気をつける
- しっかりやる
こうした言葉は、目標を書くときによく使われがちです。
もちろん、考えることや意識すること自体が悪いわけではありません。
問題なのは、そこで思考が止まってしまうことです。
行動目標を設定する上で、ひとつの分かりやすい基準があります。
翌日、「やった/やっていない」を判断できるか?
これが判断できない行動目標であれば、もう一段具体化する必要があります。
「それで、具体的に何をするの?」まで考える
では、
という抽象的な行動目標を具体化してみます。
たとえば、
ここまで書けば、かなり変わります。
翌日になれば、
- 5回実施したのか?
- 3回しかできなかったのか?
- まったく実施しなかったのか?
誰が見ても判断できます。
つまり、「考える」という頭の中の目標を、外から確認できる行動に変えたわけです。
ほかにも、
なら、
と変えられます。
なら、
と変えられます。
「理解する」「考える」「意識する」といった言葉が出てきたら、
「それで、具体的に何をするの?」
と自分に問い直してみてください。
- 書き出す。
- 調べる。
- まとめる。
- 説明する。
- 人に見せる。
- ロープレする。
実際に確認できる行動まで落とし込むことで、初めて「次の行動」になります。
「何を」だけではなく「どれだけ」も決める
もうひとつ大切なのが、達成基準です。
たとえば、
明日、ロープレをする
まで具体化したとします。
しかし、これでもまだ曖昧です。
- 1回やれば達成なのか。
- 5回なのか。
- 10回なのか。
- 5分やればいいのか。
- 1時間必要なのか。
ここが決まっていなければ、本人の判断でいくらでも達成基準を変えられます。
だから、
- 5回実施する
- 3件確認する
- 10個書き出す
- 20分歩く
- 60秒以内で説明する
など、回数・件数・時間といった数字を入れます。
行動目標を作るときは、基本的に、
いつまでに + 何を + 誰と + どれだけ + する
まで考える。
これだけでも、目標の具体性は大きく変わります。
実際の行動目標を書き換えてみる
最初に挙げた例を、実際に書き換えてみます。
例①
Before
ヒアリング練習のゴール設定をしっかり考える
After
明日、ゴール設定を考えた上で、ヒアリング練習を同期のメンバーと5回実施する。
例②
Before
「購入意思を固める」を意識してロープレ再実施する
After
明日の15時までに、同期のメンバーと「購入意思を固める」をゴールにしたロープレを3回実施し、その点についてフィードバックをもらう。
例③
Before
物件撮影で物件周辺を見て物件に対する理解をつける
After
明日の物件撮影時に周辺を20分歩き、スーパー・学校・駅までの距離を確認してメモにまとめる。
案内時チェックポイントに従って、チェックポイントの全項目を毎回確認する。
例④
Before
どんな不安を抱えているかを想像できるようにする
After
明日までに先輩の案内録音を3件確認し、お客様が抱えていた不安を10個書き出す。
例⑤
Before
端的に説明できるようになる
After
明日、事前審査をやるメリットを60秒以内で説明する練習を、同期のメンバーと5回実施する。
比べてみると分かりますが、Beforeは「こうなりたい」という方向性を書いています。
Afterは、「そのために何をするのか」を書いています。
この違いは大きいです。
予定を書いただけでは「行動計画」にならない
ここから、もう一段踏み込みます。
翌日のスケジュールに、
9:00〜10:00 相場ロープレ
と書いたとします。
時間も決まっている。
やることも決まっている。
一見、問題なさそうです。
でも、前日の時点でロープレ相手を決めていなかったらどうでしょうか。
朝9時になって、
「誰か空いていますか?」と声をかける。
相手が見つかったら、「何の項目やります?」と相談する。
そこから準備して、ようやくロープレを始める。
これでは、
「9時からロープレ」ではなく、正しくは「9時からロープレの準備を開始する」です。
特にロープレは、自分一人ではできません。
相手の予定を押さえていない状態で、
明日9時からロープレする
と書いても、それは自分一人の予定を書いているだけです。
相手が別の仕事をしていたら実行できません。
つまり、行動目標を立てるときには、
「具体的かどうか」だけでなく、「本当に実行できる状態になっているか」
まで考える必要があります。
「予定」と「行動計画」は違う
ここは分けて考えた方が分かりやすいです。
予定は、
明日やりたいことが決まっている状態。
一方で、行動計画は、
明日、そのまま実行できるところまで準備されている状態。
です。
たとえば、
9:00〜10:00 相場ロープレ
は「予定」です。
これを行動計画にすると、
9:00〜10:00 〇〇さんと相場ロープレを3回実施する。「説明が一方的にならないこと」「相手の反応を見ること」を改善項目とし、終了後にその2点についてフィードバックをもらう。
となります。
そして当然、前日のうちに〇〇さんへ声をかけ、
「明日の9時から1時間、ロープレをお願いできますか?」
と予定を押さえておく。
ここまでやっていれば、翌朝9時になった瞬間に始められます。
「明日の朝、そのまま始められるか?」で確認する
翌日の行動計画を作ったら、最後にひとつ確認してほしいことがあります。
明日の朝、そのまま始められる状態になっているか?
ロープレであれば、少なくとも前日の時点で、
- 誰とやるのか
- 何の項目をやるのか
- 何回やるのか
- 何を改善するのか
- どの点についてフィードバックをもらうのか
まで決めておく。
資料が必要なら、資料も用意しておく。
相手が必要なら、相手の予定も押さえておく。
確認したい物件があるなら、どの物件を見るのか決めておく。
そうすれば、翌日は「何をしよう」と考えるところからではなく、実行からスタートできます。
なぜ、ここまで具体的にする必要があるのか
ここまで読むと、
「そこまで細かく決めなくてもいいのでは?」
と思う人もいるかもしれません。
でも、行動目標を具体化する目的は、細かい計画を書くことではありません。
改善できる状態を作ることです。
たとえば、その日の接客を振り返って、
説明が一方的になってしまった
という課題が見つかったとします。
そこで、
明日は相手の反応を見ることを意識する
で終わってしまうと、翌日も同じことが起きる可能性があります。
では、何をするのか。
明日の朝9時から〇〇さんとロープレを3回行う。
「説明の途中で相手の反応を確認する」ことを改善項目にして、その点についてフィードバックをもらう。
ここまで決める。
そして翌日、3回実施する。
その結果、
「まだ一方的だった」
「質問を挟めるようになった」
「相手の表情を見る余裕が出てきた」
と検証することができます。
すると、次の改善策を考えられます。
課題を見つける。
↓
次の行動を決める。
↓
実行する。
↓
結果を確認する。
↓
また改善する。
このサイクルを回すために、行動目標を具体化するわけです。

言語化する力は、そのまま行動する力になる
「何をするのか」を具体的に書けないということは、自分の中でも、
「結局、次に何をすればいいのか?」
が整理できていない可能性があります。
だから、日報で具体的に書くことには意味があります。
自分が感じている課題を、
「なんとなく苦手だった」「経験が足りないから仕方ない」で終わらせず、
事実として「何ができなかったのか」まで言葉にする。
そして、
「では、明日は何をすれば改善できるのか」
まで言葉にする。
さらに、
「いつ、誰と、何回やるのか」
まで落とし込む。
これは単に日報を上手に書くための練習ではありません。
自分の頭の中を整理し、次の行動へ変換する練習です。
営業では、お客様が考えていることを整理し、分かりやすく言葉にして伝える力も必要になります。
だからこそ、まずは自分自身の考えていることを、具体的な言葉にできるようになることが大切です。
行動目標を書いたら、この5つを確認する
翌日の行動を書くときは、提出する前に次の5つを確認してみてください。
① 何をするのか?
「意識する」「理解する」「頑張る」だけで終わっていないか。
② いつやるのか?
「明日」「午前中」「15時まで」など、期限や実施時間が決まっているか。
③ どれだけやるのか?
回数・件数・時間など、達成を判断できる基準があるか。
④ 誰とやるのか?
相手が必要な行動なら、誰とやるのか決まっているか。その人の予定まで押さえているか。
⑤ 明日、そのまま始められるか?
必要な人・物・情報が揃っていて、始業してから準備を始めなくても実行できる状態になっているか。
特に最後の質問は重要です。
「この予定は、明日朝一からそのまま実行できる状態か?」
ここまで確認してみてください。
仕事は、始業してから準備するのではなく、
始業した瞬間に行動へ入れる状態を作っておく。
今日の反省を「明日は意識しよう」「考えよう」「理解しよう」で終わらせず、明日の具体的な行動まで変換する。
そこまでできて、初めて「次の行動目標」が決まったと言えるのです。
