新人の姿を見ていて感じることがあります。
それは
「トークは覚えているのに、認識と使い方がズレている」
という状態です。
特にマニュアルのトークテーマである
- 中古 → 新築の振替トーク
- 購入タイミングのトーク
この2つは、かなり誤解が生まれやすいです。
なぜかというと、「目的」の理解を履き違えているからです。
今回は何を勘違いしやすいのか/本来どう使うべきかを整理します。
新人がハマりやすい誤解:振替トーク
まず、実際に起きている誤解を整理します。
誤解①
「予算を超えてでも新築を提案するのが正しい」
- 高い物件を買ってもらう方が営業として良いことだ
- 新築の方が良いに決まってる
- お客様には多少無理してでも買ってもらうべき
こういう思考になってしまうケースがあります。
誤解②
「この会社は新築を積極的に売る会社だ」
- 中古より新築が正義!
- 最終的には新築に持っていくべき!
こういう前提でトークを使ってしまう。
結論から言います。2つのその認識、間違いです!
大前提:予算がスタートライン
不動産仲介営業で一番重要なのは何か。
それは予算設定です。ここを曖昧にした瞬間、すべて崩れます。
■ なぜ予算を守る必要があるのか
例えば、
- 月々の支払いが増える
- 教育資金が圧迫される
- 家族のイベントにお金が使えない
不動産購入は単なる「物件選び」ではなく人生設計の話です。
■ だから何がルールなのか
- 予算上限を超える提案はしない
- 超える物件は「見せない」
ここは絶対にブレてはいけません。
なぜか。
- ローン負担が増える
- 家計が崩れる
- 教育資金に影響が出る
- 人生設計が崩れる可能性がある
つまり、
お客様の人生を壊す可能性があるから
です。
なので、
「予算を超えてでも新築を勧める」
これは営業ではなく、ただの人生破壊者です。
お客様の人生が破壊されないように、「無理のない範囲の最大値でしっかり予算を決めて、それ以上の価格の物件は見ない!」という話をしているのです。
中古→新築トークの本当の意味
では、このトークは何のためにあるのか。
答えはシンプルです。
「選択の材料を渡すため」です。
中古と新築、それぞれの事実を伝える
例えば
中古物件:
- 物件価格が安いから購入費用は抑えられる
- ただし将来的な修繕費などがかかる
- 築年数によってはすぐに建て替えリスクがある
新築物件:
- 目先でのメンテナンスリスクは低い
- ただし、価格は高くなる or 希望エリア内の選択肢はかなり限られる or エリアを変えなければいけない
これを事実として伝える。
その上で、
「お客様にとってはどちらが合っていますか?」
と判断を委ねる。これが本来の振替トークの意義です。
営業の役割を履き違えない
ここが一番ズレやすいポイントです。
❌ 間違った役割認識
- 新築を買わせる
- より高額の物件に誘導する
- お客様の意思決定を営業側でコントロールする
✅ 正しい役割
「選択できる状態をつくること」
例えばこうです。
- 中古のリスクを理解いただく
- 新築の特徴を理解いただく
- その上でどちらが自分に合うかを考える
この状態を作るのが我々の仕事です。
■ 実際の現場イメージ
お客様によっては
- DIYが好き
- 自分で手入れしたい
こういう方もいます。当たり前ですが、その人に新築をゴリゴリ勧めても意味がありません。むしろ信頼を落とすでしょう。
逆に、
- 将来の修繕リスクを避けたい
- 新築に対して憧れがある
こういう方には新築が合う場合もある。
つまり、
👉 正解はお客様ごとに違う、のです。
だから、選択肢となる客観的な事実に基づいた判断材料を与えて、「どちらが合っていますか?」と選んでいただくのです。
そもそも「売る」という概念がズレている
ここも重要です。
我々は
- 自社物件を持っていない
- 市場にある物件を紹介する立場
です。
つまり、
「これを売りたい」という前提が存在しないのです。
我々がやっていることは至極シンプルです。
- AとBを比較する
- どちらが合うかを一緒に考える
繰り返しますが、選択肢と判断軸を渡すこと。やるのは、これだけです。
*詳しくはマニュアルトークを体得後、2ヶ月目以降の研修にて解説
購入タイミングトークの誤解
タイミングトークも、同じ構造で認識と使い方がズレる人がいます。
❌ よくある誤解
- 即決させるためのトーク
- 背中を押すための説得材料
- 購入を急がせるためにかける圧
こういった認識で使ってしまうケース。
これは完全に認識がズレています。
✅ 本来の目的
「先延ばしの意味を理解してもらうこと」
「先延ばしするメリットがないことに気づいてもらう」
ここに尽きます。今買って欲しいから話すトークではないのです。
数字を使い客観的な事実を見つめた時に、先延ばしするメリットが無いことにお客様自身が気づく
= これは早期の買った方がいいのかもしれない
という認識がお客様の中で高まるだけの話なのです。
*実際、このトークを話しながら、自分自身でも「俺も早く買わなきゃな」と思った人も居るのではないでしょうか。その心理変化と同じです。あなたも「客観的数字を見て、気づいた」のです。
■ 具体的に何を伝えているのか
- 家賃は何の資産にもならずに消えていくお金である
- 頭金のために毎月数万円貯金しても、住宅ローンの月々の支払額はさほど大きく変わらない
- 先延ばしすると老後の負担が増えて定年後にカツカツになる可能性
これらはすべて「客観的な事実」なだけであり、この話を聞いた多くのお客様が「確かに、先延ばしにするメリット無いな〜」と思われて、真剣に住宅購入を検討し始めるようになった、というだけのことです。
■ 重要な違い
新人がやりがちなミスはここです。
「このトークを使えば今買うことを決めてもらえるんだ!」
いいえ、そんなことはありません。
たかが10分程度のトークをあなたが話したくらいで家を買うなら、お客様はとっくに家を買っているでしょう。
勘違いしないでください。
あくまで「先延ばしにするメリットが無いことにお客様が気づく」だけです。
ここを履き違えると、
- 無理に詰める
- とにかく買う理由を伝えて押す
- 知識を並べて説得する
という姿勢になってしまいます。
- 説得 → 営業が結論を押し付ける
- 気づき → お客様が自分で判断する
このトークの目的は後者の「気づき」です。誰もあなたに説得されて家を買おうなど思いません。
まとめ:トークの使い方を間違えるな
最後にまとめます。
■ 間違った認識
- 今買わせるために使う
- 誘導するために使う
- お客様に有無を言わせないようコントロールするために使う
もちろん営業マンである以上、不動産購入へ導くのが仕事です。
しかし、営業経験乏しい新人が、相手を誘導して人生一の買い物を決断へ導こうなど、そんな簡単な解釈で務まるほど軽い話では無いのです。
■本来の使い方
正しい使い方はこうです。
- 客観的事実を提示する
- 感情ではなく数字・構造で伝える
- お客様に考えてもらう
そして最後は
「この話を聞いて、どちらがあなたの考えと本当に叶えたい未来に、合致していますか?」
という問いで終わるのです。
最後に
今回伝えたいことをシンプルにまとめます。
■誤解してほしくないこと
- 新築を売るのが正義ではない
- 高い物件を勧めるのが我々が目指す営業ではない
- 説得して決めさせるのが仕事ではない
■本来やるべきこと
- 予算を決めて守る
- 客観的な事実を伝える
- メリット・デメリットを比較する
- 判断材料を渡す
- 最後はお客様に決めてもらう
ここまで読んで、1つ考えてほしい
もしかして、まだあなたは物件を「売る」と思っていないだろうか?
我々は「最適な物件を選ぶ為の、判断材料をお渡している」のです。
この認識の違いだけで、不動産仲介営業の質は大きく変わります。
ここまで解説してきたような、たった1つのトークに対しても認識のズレがある限り、どれだけマニュアルのトークを覚えても、その効果は発揮されず、結果は安定しません。
確かに、マニュアルトークは強力です。
ただし、意味を理解せずに使うと、誤った武器になります。
逆に、意味を理解して使えば、お客様の人生を守りながら望む未来へ導くツールになる。
どちらになるかは、使い手である、あなた次第です。
この前提を、絶対に履き違えないでください。
